[6]佐々宝砂[2004 11/28 19:47]
、さらにもまたふり濺(そそ)ぐ憂いのしらべ
きゝおれば切にも恋し、
夢のごと心の上に
泣き沈む夜の雨を……


***


「ふるさと」

ふるさとの
小野の木立に
笛の音の
うるむ月夜や。

少女子(おとめご)は
熱きこころに
そをば聞き
涙ながしき。

十年(ととせ)経ぬ
おなじ心に
君泣くや
母となりても


***


「林檎の樹のかげに」

林檎の樹陰に
われ、君を抱く。

日は静かに没しけり、
赤く赤く海の彼方へ。

胸ふるふ接吻の中に
をりからや、囀づる小鳥。

最終(いやはて)の別れの時、
啼きいづる小鳥――

今もまた涙ながらに
おもひいづる彼の日のわかれよ。


***
#引用元が不明です。なぜなら私が昔自分のノートに写したものだからです。
#すみません。おそらく筑摩書房版です。
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