[5]佐々宝砂[2004 11/28 19:41]
)きて、
歩して南林に容与す。
木蘭の遺露に栖(やす)み、
青松の余陰に翳(かく)れん。

もし行き行きてみること有らば、
欣びと懼れと中襟に交々(こもごも)ならん。
竟(つい)に寂寞として見(まみ)ゆること無く、
独り悁想して以て空しく尋ねん。

葉は燮燮(しょうしょう)として以て条(えだ)を去り、
気は凄凄(せいせい)として寒に就く。
日は影(ひかり)を負うて以て偕(とも)に没し、
月は媚(なま)めかしく雲端に景(ひか)る。

徒らに勤(くる)しみ思いて以て自ら悲しみ、
終(つい)に山に阻まれ河に滞る。
清風を迎えて以て累(わずら)いをしりぞけ、
弱志を帰波に寄せん。

蔓草の会を為すを尤(とが)めて、
邵南(しょうなん)の余歌を誦せん。
万慮を担(うちあ)けて以て誠を存し、
遙情を八遐(はっか)に憩わしめん。


(岩波文庫版『陶淵明全集』読み下し文から抜粋)
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