春にうまれたあなたのこと/藤丘 香子
 
音楽を聴き
そして日記を綴り
気がつくとあなたのことを考えている

あなたが何も言わないのは
旅をしているからなのでありましょう

考えても考えても先へ進まない
わたしはちょうど
満ち潮でもがくオールなのでありましょう

しばらくのあいだ
魚になっているに限ります

でも
眠ってはいけない
泳ぎはからっきし下手で
きっと深く溺れてしまい
月夜の
青い砂浜に戻されてしまうから





冬支度が始まる
暖炉を磨きあげ
白樺を
少しばかり上手に焚けるという理由で
火の門番になってしまった
寒さは三日続いた

炎の形を知っていますか

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