泣く子は誰だ/プル式
 
電車が動き出す
もうすぐ地下を抜け
地上にでる
在るはずも無い風景
白い曇り日
多摩あたりに向かう
神社や商店街
見慣れた居酒屋
風の匂い
空気の湿度

ガタン

風景が一つ剥がれる

ガタン

また一つ
また一つ
ゆっくり剥がれていく世界
窓の中の僕は泣きそうな顔だった

ガタン
懐かしい匂いが背中を押す
自分の境界線を保てない
ガタン
溶け出す自分を必死でかき集める
混ざり合う
僕と
剥がれて行く記憶

ガタン

ガタン

大きなゆりかごは
切なくて優しい
いつかの夢の様に
   グループ"作者が好きな自分の作品"
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