哀しみ皇子(2)/アマル・シャタカ
鍋に入れた
「こうやって取り出すんだ」
どうやらハンカチーフみたいなのが溶けて、表面に涙が浮いてくるみたい
それをオジサンは大事そうに柄杓ですくっては型に入れてる
ぼくの手の中の哀しみが震えだした
「涙を宝石にするにはね、涙だけじゃダメなんだ」
オジサンは独り言を言い出した
どういうこと?その場で涙だけをもらえばいいのに
「優しさが加わらないと涙は宝石にならないんだよ」
ぼくには意味がわからなかったけど
へえ〜、それがオジサンのしごとなんだね
とわかったようなふりをしてみた
窓の向こうから哀示美鳥がぼくを見て鳴いた
シミジミ〜
女の人が帰っていって、ぼくとオジサ
[次のページ]
前 次 グループ"哀しみ皇子"
編 削 Point(4)