裏銀座/はらだまさる
キリンは、逆光に照らされあまりにも美しい姿で、私の眼に飛び込んできた。あたしは彼女みたいに美しくなれない。ぼくらは水晶小屋で作ってもらったオニギリを頬張り、全身が山に満たされてゆくのを感じながら、一息ついた。不必要なものなんて、ここには存在しない。必要なものだけがあって、それ以上でも以下でもない。長い前足に支えられた緑色の大きな影が覆い被さって、ぼくは砂になる。砂になったぼくは、汗をかかない。ipodの白いイヤフォンが、乾燥しきった地面に埋まっている。山はどんな音楽を聴いているのだろう。あたしは、まだ十二時を知らない。滑落した人々は月に照らされて、俺はその下で永久凍土にでもなるのだろうか。私が痛め
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