降り来る言葉 LXIII/木立 悟
袋と痛み
鍵盤と息
口のなかの 冬や冬
聴くものすべてを 紅く照らす
水を灼き 陰を灼く
ひとりの惑星
冬が巡るたび
失う声
道に道を貼り
陰影を偽り
空を持ち上げるたったひとつの
幼い樹をくすぐる
柱は柱の上に立ち
土の波紋をあざやかにする
離れる空を離れるままに
ひろげた指をあきらかにする
夜を分ける灯
うなじと水
暗さ 冷たさ
行き場の無さ
曇のこがね
砂のこがね
夜へ夜へ 息を吹き
水と水色を遠去ける
鉱が鉱を塗り路地になり
ひとりの冬を連れてゆく
音の背
はじまりのない波
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