降り来る言葉 ?/木立 悟
土と風の間を
蝋燭の火が流れてゆく
緑の夕方を
横たわるひとりの子の上を
枝の影は伸び
透きとおり 重なり
森のなかの道を指さす
雲が雲を吸い
空を明るくにじませる
青から蒼へ
水の光
土の光を手招いている
もうすぐ終わる午後
まぶしさのなかの灰の手
結び目を映して
夜をひらく手
小さくはじける水のかたちが
行方の行方を求める胸にかがやいている
ひとりとひとりをつなぐ指先に
苦しみもよろこびもよみがえる
照らしていることにも
照らされていることにも
気付かない光の前で
夜にかがやく陽時計の前ではばたくもの
雲を溶かして陽はのぼる
海しか飛べない神を照らす
遠くて近い高みの笑みが
ひとりの子の胸に降り立ち
ともに舞い ともに歌う
世界がはじけて
もどらない歌を
原が果てる場所を過ぎても
夜から朝へと手わたされる
火のような緑のなかをめざめて
みんなが光に遊べるように
たがいの影を笑えるように
たがいのかたちを歌えるように
ひとりのすがたを祝えるように
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