降り来る言葉 XIX/木立 悟
球面に映りすぎゆく静かな
五月の残雪の行方のような
ひらく いのり
傷口の いのり
小さな弔いのひとつひとつに
火とやわらかな毬を手わたし
苦みと痛みと羽を受けとる
赤く切り立つ岬のいのり
一羽また一羽おり立ちて
荒れ野に花の文字を描く
鳥の動きのまねをして
微笑む白い影たちの息
花を持つ子の背にとどき
森と街のはじまりを知る
まるくかがやく硝子の上を
くりかえしくりかえす問いと応えの
新たな満ち干きのようにすぎてゆく
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