降り来る言葉 XXVIII/木立 悟
 



左目の蜂
音を運び
ひとつふたつ
鎖骨に沈み
水音になる
心音になる


傷は多く
果実の匂い
口でふさぐ
はばたきの色
外へ 外へ
去ろうとする色


水辺をゆく銀
とめどない白
みどり 浮島
どこまでも不確かに
ゆるぎないもの


指と指
言葉と言葉のはざまの舞台
からみあうものたちに突きつけられる
高く熱い布の壁


無機の羽
雨の浅さを補う結露
銀は小指からのみ血を流し
微笑むまなこのかたちの下の
肉の謂われを掘りつづけている


いつまでも光は音に追いつけない
暗がりを駆ける子の声に
触れることさえで
[次のページ]
   グループ"降り来る言葉"
   Point(9)