降り来る言葉 XXVIII/木立 悟
えできずにいる
けだものの牙が けだものの尾が
黄金(こがね)に至らぬ毒と鉛を
毒と鉛を解さぬ黄金(こがね)を
絶えることなく打ち砕いている
すぐ近くに見える雨音が
たどりつかないことを訝(いぶか)り
時間も場所も
遠く離れているものたちが
あまりに似ていることを訝(いぶか)り
銀は水辺にひとり暮らした
信じることはわずかだった
未分化の目を見つめている
常に水色に流れ落ちそうな
数とは何かを知らぬ目を
音がそのまま
波紋さえなく
沈みゆく目を見つめている
いくつもの汽笛が
波の下をゆく
飛ぶものは目をふせ
道をあける
砂を歩むもの 消える足跡
銀は水の輪のあつまりとして風に立ち
夜明けはみどり
かかえきれず
左目に手に胸にあふれる
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