降り来る言葉 XXXI/木立 悟
 



双つの雨音を右目にもどし
煙を数えて夜は明ける
みな何かをすぎてゆく
みな何かを置いてゆく


欠けた娘を肩にのせる
鏡の向きがいつもと違う
欠けた娘を肩にのせる


編む手から
花の後ろがわから
よどみない手の
流れのほうから


青い炎を取り出すとき
奥の奥にある
青い炎を呼び起こすとき
目を閉じるたび 取り出すとき
目を閉じることで 呼び起こすとき


進みつづける羽のきざし
ななめ後ろをすぎるきざし
右ななめ前から来やるきざし
重なりつづけるかたちのきざし
背を向けたままの応えのきざし
どこまでもひとりの姿のきざし

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