降り来る言葉 XLII/木立 悟
うに
水の音を描きつづけている
山は剥がれ
曇になり
においは長く降りつづき
水を流れを赤くしている
響き 響き
雨の館内
誰も写しとらないものにかぎって
署名はかがやかしく記されている
雨は去り
硝子や窓の心だけが流れる
話しかけてもらえぬ傘と
同じ数だけ流れ流れる
砂の斜面を駆けおりる影
かつて水があふれていた土地
いのちはいのちのまぼろしとともに
常に常にまたたいている
どこにもつながらない海に
火の羽が落ちてくる
片目をつまびくものに応えて
火は火の上に降りつづく
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