降り来る言葉 XLIII/木立 悟
 
っと知らないひとでいました
すれちがう数が両指のうちは
ずっと知らないままでよかった
こんなにこんなに苦しいのなら


空の牙の並びの内を
午後はすり抜け 落ちてくる
捨てられた鏡の胸をあけ
名づけたばかりのけだものを呼ぶ


光の種になっている
まだ半分しか呑みこめない
光の種になってゆく
人見知りする 眠りのかたちになってゆく


持つものも持たざるものも満ち足りて
ではかなわぬ願いの居るべき場所は
その答えは無いのです
どこまでもどこまでも無いのです


時がひたすら乱れて映り
どこかがどこかに似てはさまよい
曇を重ね敷きつめて
ひとりひとりの曇へと至る


穏やかなふるえ
まちがいの樹のはざま
喉知らぬあつまり
指と陽のまま


水飴に消える朝昼夜
幾度名前を呼んだだろう
昼はことさら巨きく撓み
まなざしを遠くへ遠くへ馳せさせる
























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