降り来る言葉 XLIV/木立 悟
の
光の枝の足跡のもの
ふいに焼かれる朝のもの
目をふさぐ帯に描かれた午後の景
針もなく布もなく
糸を指で伝えている
とどろきは午後
祭のあとに祀られる面
いつかふたたびはじまる日に
あるはずのないその番号を
わたくしにだけ教えてほしい
盲のまま苦みの海をひらいて
底の底に
できるだけ多くの名前を記すため
はじまりはただ似姿でした
腕をひらいて廻るたび
あなたはあなたでなくなってゆく
無数の扉の
最も奥に立つもののように
すぐ前の
すぐ後のよろこびも忘れている
だからもう一度もう一度
うたってほしいと願い かなえられない
あと一夜
あと一夜と狭まり今日になり
壁や傷や香辛料
いつか見たはずの
笑みの行方さえ思い出せずに
銀に塗られた鉄の橋
ほつれは沈みうたいなじみ
かなえられない願いの終わりに
切られ結ばれ降りつもる
切られ結ばれ降りつもる
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