降り来る言葉  XLIX/木立 悟
 
のは胸と知り
自らを殺(け)し
ひとかけらを得(う)る


 炎 螢
 至らぬ空をかきわけ
 ひとり のぼる
 ひとり のぼる


歪む雪 夜の熱
目と目のはざまを遠く旅する
指ひとつ
指ひとつ越えられぬ
夜の ふるえ


言葉はすべて
言葉へ獲られ
夜はまぶしく
手は燃えて


裏はじっと裏を見て
朝昼夜も動かない
無いものへの半ばの道
やがて無いものへと至る道


 とめどない負
 ふちどりの逆
 蒼は蒼の粒
 頬をゆくいのち


ふところの月の手
緑も霧も無い
影は去る
幾つかは気付かぬまま
走り去る


冬と同じ蒼 とどろいて
蒼は蒼は蒼 分けられぬ
与えられた名をほどき
新たな響きを布に噛む


 雨の羽
 ささげもの
 包むひと
 砂の光


山の腹の時
暗符を投じ
水の針 地の針
到かぬものを放ちつづける
































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