狂女、ここにあり/なかがわひろか
 
あはれ女の妖かしは
されど現の恋か知らん
まるで豚の子を産んだ
素知らぬ顔の母の様
嗚呼待てど暮らせど来ない人
足が地へとへばり付く
そこから地下へと根が生えて
私の血が水と溶ける
貴方はその水を飲むかしら
おいしいおいしいという貴方
そんな貴方が目に浮かぶ
嗚呼浮きし沈みし彼の笑顔
貴方の水となる私
ここから動けぬのも本望
我は風の子元気な子
嗚呼私は一体誰の子か
豚を生んだあの人は
次はなんの獣を産み落とす
嗚呼我はなんじを思い描かん
待てど暮らせど来ぬ明日
貴方の笑顔
豚の様

(「狂女、ここにあり」)


   グループ"女歌"
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