兼業恋人/なかがわひろか
あやおかしな男とはいるもので
月水金になりゃ
どっかに行っちまう野郎がおりまして
火木、土日は
わたしの寝床で
愛を囁くんですが
他日は何処へか行くんですよ
ある日町を歩いておりましたら
あら吃驚
どこかのご婦人と腕を組むあの人の姿
目が合えど知らぬふりをするお人
火曜日に聞いたところ
わたしの愛では
物足りないらしく
他日は彼のご婦人に
愛をお裾分けしてもらっているとのこと
あやあんたはまるで兼業恋人
無駄のない人生を送ってるって
あらあらどうして土日はいるのと聞いたらば
彼の人はどなたかの伴侶
さすがにそれはまずいからと
なるほどなるほどど
合点が行ったという訳です
しかしまあわっちにはお前だけと
そんな風に言われますと
世辞に弱いわたしは
それはそれでよろしいかと
思ってしまうのでありました
(「兼業恋人」)
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