ベルセーズ/もも うさぎ
に甘いメロディーを
蜂蜜のようにしたたらせて
駅のほうからアパルトマンを見やれば
ベージュのドレスを着た少女の影が
そっと窺えた
彼はそれを 胸の奥深くにしまってしまった
いつはじまったのか分からないメロディーは
いつやむとも知らず
それは何十年も何百年も繰り返されるように感じた
それは彼の情欲を溶かし
甘美な言葉ばかりを
妄想のなかに
幽霊のように 巣くった
列車の音も 時鐘も
いつしかやんでしまった
ただひとりで彼は
その情欲を持て余した
天使のような
葡萄のはじける蜜を
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