ゆうこく/佐々宝砂
 
おくすりをこねて大蝦蟇をつくる
白縫の姫も自雷也も母が語れば草双子より奇天烈なのでした。

ある日そんなおはなしをしていたときのことですが
母は不意に顔を曇らせ横を向きました。
「おかあさま、どうなさいましたか」と訊ねましたら
「懐かしかっただけなのよ、なつかしかったの」と母は申しました。
母は何を懐かしんでいたというのでしょう。
母が語っていたのは西洋の見聞録にもありそうにない、
世界のすべてを覆いひとびとすべてを繋ぐ蜘蛛の糸のおはなしでしたのに。

あれから何年も何年も月日が経ってしまいました。
江戸はおろか明治の御代さえ遠くなりました。
わたしは今、母が語ったゆめま
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