ゆうこく/佐々宝砂
 
めまぼろしをたいそうなつかしく思い返します。
世界すべてのひとびとを繋ぐ蜘蛛の糸。
海を越えて。ことばも越えて。国も越えて。ひとを繋ぐ糸。
そんなものがあったら。

息子よ。おまえは国を憂えて立つ、と言うのですね。
立派な考えがあってすることなのですから、わたしは止めませぬ。
止めませぬが、おまえのくわだては破れるのですよ。
おまえの名は残るかもしれませんが、それだけのこと。
刀はいずれ、ゆめまぼろしに破れるのですよ。

わたしの話はこれで終わりです。
あとはおまえの好きなように考えなさい。
ああ、もうずいぶん暗くなった。
雪になるかもしれませんね。



   グループ"Light Epics"
   Point(7)