ゆうこく/佐々宝砂
めまぼろしをたいそうなつかしく思い返します。
世界すべてのひとびとを繋ぐ蜘蛛の糸。
海を越えて。ことばも越えて。国も越えて。ひとを繋ぐ糸。
そんなものがあったら。
息子よ。おまえは国を憂えて立つ、と言うのですね。
立派な考えがあってすることなのですから、わたしは止めませぬ。
止めませぬが、おまえのくわだては破れるのですよ。
おまえの名は残るかもしれませんが、それだけのこと。
刀はいずれ、ゆめまぼろしに破れるのですよ。
わたしの話はこれで終わりです。
あとはおまえの好きなように考えなさい。
ああ、もうずいぶん暗くなった。
雪になるかもしれませんね。
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