ゆうこく/佐々宝砂
父はつまらぬ魚屋でございましたが、係累は多うございました。
たいそう古くから魚屋を営んでいたと申します。
けれども嫁はどこの馬の骨ともつかぬと祖母は母を貶めました。
わたしは母の係累をひとりも存じませぬ。
嫁入り道具はただひとつ文箱があっただけと聞きました。
けれど母はあかるいひとでございました。
安物の絣を着ても大輪の芍薬のようにはなやかなひとでした。
わたしは母が本当に大好きだったのでございます。
母はたいそうおはなしの上手でございました。
浦島太郎は「うちゅうせん」に乗り桃太郎は「いすらえる」にゆき
うりこ姫は「ぶるうすとっきんぐ」に入り
白い衣の学者さまがおく
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