空の青、海の青/佐々宝砂
りギラギラしていたおれたち。
世の中には色がなくて、
色気もなくて、
それでも空と海だけは青かった。
おれ、特攻隊に入りたかった。
乗るンなら零戦だ。
お国のために死んで空の青に溶けるンだ。
だのに兄ちゃんが乗ったのは回天だ。
特攻隊だけどもかっこよくない。
人間魚雷っちゅうやつだ。
空ならいい。空で死ぬならこわくない。
でもおれ、人間魚雷はこわかった。
なんつっても魚雷だ。
這いつくばってやっとひとり入る狭さだ。
それで突撃する。
潜るのは海だ。
狭くて暗くて息苦しい魚雷で突っ込んで、
海の藻屑だ。
おっかねえ。
おれは前浜で釣りをし
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