彼等/佐々宝砂
えた。
そのひとが着てたあかるい空色のTシャツを覚えてる。
顔なんか何も覚えていないのにね。不思議ね。
そのひとがざっくりと私のおなかを刺したので、
それで私はここにいるの。
2.
空の向こうをみてごらん。あかるいね。
あかるいでしょう。あそこまでゆくのよ。
でもあそこまでは長い道のり。
淋しくて、暗くて、寒くて、長い道。
そしてそこにはいろんなものが蠢いていて。
かたちがなくてかたちをほしがる魑魅魍魎、
やぶにらみの目にあかい涙の鬼神たち、
しでむしをたからせた骸骨、しゃれこうべ。
四十九日のあいだ、その道をゆくの。
泣きたかったら泣いてもい
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