創書日和「爪」 爪/北野つづみ
 
夜に爪を切ります
迷信は知っています
そのとき をあれこれと想像してみます
みっともないほど泣きわめくかも と思います
ハンカチが二枚は必要でしょう それとも三枚かな?
鼻紙も忘れずに用意しましょう

意外にも
冷静だった場合にはどうしましょう
私の目から 一粒の涙もこぼれなかったら? 
そのときには
冷たい娘と思われないために
呆然としたふうを装うのがいいかもしれません

むかし 真夜中にひとり
目が覚めてしまったときのことを思い出します
隣の布団で眠っていた母の横顔は
月明かりのした まるで
息をしていないふうでした 皮膚は青白く
落ちくぼんだ眼
まぶた
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