創書日和「爪」 爪/北野つづみ
ぶたはゆるく 力なく閉じていたので
あのときは本当に怖ろしかった
世界のすべてが止まったようで
静かで
・・・
けれど 私は
身じろぎもせず見つめているだけだった
本当は確かめたかったのに
そっと手を伸ばし
あなたの頬に触れてみたかったのに
そのとき がきたら
こんどはしり込みしたりしない
ホントウニサイゴダモノ
そう思うと 鼻の奥が
なんだかつんと してきたようです
夜
爪を切っています
わたしの爪の形は母のに似ています
この爪で
この指で
ほどけかけた糸の端と端とを
今一度 強く結び直すべきなのかどうか
考えあぐねています
とりあえず 明日
電話してみます
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