ペイター「ルネサンス」(2)/藤原 実
 

ペイターはヴィンケルマンの人物像について


   「そこにはいつも、何か新しいものを発見する願望よりも、失ったものをもう一度
    手に入れようという憧れがあるように見える」
               (「ヴィンケルマン」)


と言っているが、それはかれ自らの性向でもあったろう。


   「われわれの生活のなかの現実的なものは、流れの上にかつ消えかつ結ぶ泡沫か、
    過ぎ去った瞬間のいずれは逃げ去る記憶をわずかにうちに留めた、ただ一つの鋭
    い印象に、小さく解体する」
                        (『ルネサンス』「結語」)
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