ヒューム「ベルグソンの芸術論」(3)/藤原 実
って偶然の戯れに刻々に形成され、たえず変容しつつ同一であるような無底の空間を発見する特権にあずかったのである。偶然とは無神論者に下される恩寵にひとしいものにちがいない。」
「私たちの生は、ことごとく、虚無のあくなき飢渇をいやすための終りのないバケツリレーであるのかもしれない。…(中略)…だが同時に、山野に伏してはふたたび旅立つこの風雲(偶然)に身をゆだねた全行程は、投げられては立つ起き上がり小法師や賽子の遊戯運動そのものでもあるのだ。否定と肯定は果てしなく交錯している。なさねばならぬのは賭(Spiel=遊戯)である。男はまたしても賽を投げる。」
(種村季弘「賽を投げる男
[次のページ]
前 次 グループ"『世界の詩論』(青土社)を読む"
編 削 Point(2)