萩尾望都私論その6 私の赤い星2「母への憧憬」/佐々宝砂
るいはモルモットにされる運命にある。戦争と監視の目をかいくぐり地球に育ったセイは、自分のアイデンティティーの根っこにある火星を強く意識している。いや、ほとんど「火星に恋している」。‥‥と、いうのがこのマンガの惹句だ。火星に恋する少女。
だがそれはほんとに恋なのだろうか、恋だとすればこれは間違いなく母恋だ。「わたしの生まれた星 赤い風の吹く星 遠いキャラバン‥‥」故郷に思い馳せながらセイはねむる。こどものように、自分のくちびるに自分の指を寄せて。友人がいても、誠実で優しい養父がいても、またたとえ地球人の恋人がいたとしても、セイは孤独だ。セイに必要なものはいったい何だろう? セイ自身は、「わたし
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