ひとしずくの夜明け/石瀬琳々
 
ひとしずく、落ちて夜明けを目覚めゆく希(ねが)いを祈りを君の瞼に


白い鳥ふいに飛び立つ海岸(うみぎし)に遥かな時をひとを忘れる


また夏に帰ってゆく旅誰もいない駅にまどろむ麦藁帽子


まだ青い蕾を心に抱(いだ)いては日々は花びら風に散りゆく


永遠を波がさらって声もなくただ砂の城崩れる夕べ


遠い日へ列車は走るこだま、こだま、緑に濡れたおもいでのゆく


さびしさは身を揺する花草原にリュート爪弾く風の横顔


目のおくに河は流れるどこまでもあふれて遠く君の原野へ


灯台は極夜を守る波間より指さす方(かた)へ光はのびて





   グループ"薊道"
   Point(4)