風のような音楽/石瀬琳々
 
指先は頬をすべって触れてゆくやさしい風のような音楽


君の背に耳寄せて聴く森があるざわめき揺れる二人の愛も


黄昏に言葉を失い泣き濡れてモルフォ蝶飛ぶわたくしの夜


白い手にからまる翼いつか見た空の余白へ飛ぼうとしてなお


愛永遠(とわ)にあかいと言って突き刺さる湖面に落ちる君の一葉


風冷えの街海に似て冬の日へ帆を上げてゆく心の船の


めぐり逢い、木の間隠れの鹿のごと見つめ合えれば運命の旅


君の目の燃える雪野へ迷いたい淋しさゆるす鍵をさがして


涼やかな風それとも愛の言葉くちびるこぼれる歌を待ちつつ




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