楽園/石瀬琳々
 
忘れてはまた思い出す白い馬スノードームをわたしの冬よ


赤い鳥、涙する日も喜びもわたしに巣食う淋しささえも 


現世(うつしよ)を壊すくらいに濃青(こいあお)の翼が欲しい君との恋の


そっと君齧った檸檬黄に染みていつかわたしの月となりゆく 


来世(きたるよ)を見たいと漕ぎ出すみずうみに黒い瞳のさびしいあなた 


夜想曲(ノクターン)薄紫の痣に似るすみれの花よ胸にまつわる


春の目覚め、風も言葉も脱ぎ捨てて森に散らばるみどりの鱗


くちびるをやがて重ねて薔薇色の暁君の愛も知らずに


花が咲いて笑う君の目のなかに楽園がある黄金がある




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