小詩集【常夜灯】/千波 一也
 
敬うことが
もっとも
重い鍵

罪ならぬ罪を
美しく
染めて
しまう
もっとも
暗い






十、 臨月


伏すべきあては
知らずにきたから
ねがいはさほど
鋭くはない

それでも
痛みは確かにあって
聞くべき声は
必ずあって
これまで
何度も
失ってきた

拾い集めた鏡のなかに
夜のかけらを
光らせて
何度も
何度も
求めつづけた

もう二度と、など
果たせもしない
いつわりならば
明日また
生きていよう

生まれてこよう
広大なこの
灯りの
すみに





終、 余白


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