小詩集【すべてはとうに月でした】/千波 一也
 


一 はじまり


夜が
輝きはじめると
色彩は、
狂う

黒く
黒く、

生まれ変わっている
ようにも
見える



月は
今夜も
あかるいけれど

影は、
いない

いつのまにやら
何処にも、
無い





二 包囲網


影は
監視している

影を
影たらしめる哀しさの
つかのま放つ
白雪を


そこから去ろうと
するたび
影は

おのれの
おのれの為の言葉に
久しく聞き入る


もう、
手遅れなのかも知れない

万策
尽きては
いなくても

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