幽霊と桜/岡部淳太郎
 
えば
あの人も短い時間をとうに終って
死んでから随分になるというじゃないの
もしかしたら
私がとり憑いて
殺してしまったのかもしれないけれど
どうだったかしら
そんなことはもう
忘れてしまったわ
いずれにしても
自分の時間と同じくらい短い小説を
こつこつと書いていただけの男なんて
ずっと大昔に死んでしまった私から見れば
可愛い子供のようでしかなかったし
そんなことを気にするほど
急いでいる私でもないし
そうじゃない?
ねえ

まあ
私と同じぐらいに淋しくて
暇を持て余しているのなら
そこで騒いでいる人たちがどいてから
そう 夜になってからでもいいわ

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