したたる、/岡部淳太郎
 
                したたる、

水のひびきのなかに、私の声があ
ります。暗いこころのままで死ん
で幽霊となった私のとうめいな喉。
ぬれながら、だえきもでないほど
にかわいてしまった私の声は、ひ
とつぶずつの水のしたたりのなか
に封印されて、もうそこから出る
ことができなくなっているのです。


                したたる、

水の汚れた清冽さのなかに、私の
怨念も情念も、人の世への未練も、
それにたいしてうけるであろう報
いでさえも、すべてがすきまなく
押しこめられているのです。あな
たにはおわかりにならないでしょ
う。死んで幽霊
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