死神と私 −雪溶け−/蒸発王
一人の男に拾われていました
男は手帳の中に自分と妻の名前を見つけ
五年後に自分と妻が死ぬことを知ってしまっていました
男はいくぶん痩せた表情で僕を見ると
その瞳にだけは煌煌とした光をともして
僕に取引をもちかけました
自分達には生まれたばかりの娘がいる
まだ名前もつけていない
娘の名付け親になってくれ
そして
自分達が死んだ後に後見人として
娘の面倒を見てやって欲しい
もしもこの条件を飲めないならば
この手帳は返さずに燃やしてしまう
と
取引というより脅迫でした
それでも
彼の瞳に宿った光が
僕の興味の琴線を揺らしたのです
僕は契約
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