死神と魔王−魔王と出逢った−/蒸発王
 
“死にませんよ”


春の夜明け
川ぞいの土手を歩いていると
魔王と出遭いました
鼻水をずるずるとすすっています
まだ寒い中僕を待っていたようです
とりあえずティッシュを渡すと
魔王は力なく鼻をかみました
丸めたティッシュのゴミを胸ポケットにしまうため
魔王が着ていた黒いマントを開くと
魔王のマントの下には
銀色の肋骨が剥き出しにされていて
其の肋骨の籠に納まった心臓が
赤くはれて痛そうに脈打っていました
少し膿んでいるようにも見えます
『恋心』
魔王は自分の恋心を哀しそうに愛しそうに見ると
この恋心は死んでしまうのか 
私は死んでしまうのか
と訊いてきま
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