死神と魔王−魔王と出逢った−/蒸発王
きました
僕が死神だから
そんなことを訊いてきたのでしょう
僕は黒手帳を開き
先刻回収したばかりの魂を一つ
魔王の恋した女の魂を
魔王に手渡しました
もうすぐ夜が明けて朝焼けができます
その朝焼けに魂を投げ込まなければ
魂は永遠に現し世にとどまります
“死にませんよ”
この魂を貴方の肋骨の籠に
恋心もろとも閉じ込めることができればね
と言うと
魔王はしばらく固まっていました
やがてぽろぽろと泣き出して
最初はゆっくり
それから素早く首を横に振ると
出来ないとうめきました
何故?
あの人にはもっと生きて
もっと恋をして
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