夏 極/
塔野夏子
そして今年もまた夏が此の世を
残酷に覆い尽くしてゆく
夏は光と影の鋭い刃(やいば)で
其処彼処抉り取ってゆくから
見渡す景色は狂おしいほど彫り深くなり
抉られた処から噴き出すように
強い色の花々が咲く
見あげる空も強い青で
其処を幾つもの透明な髑髏(しゃれこうべ)が
列をなし横切ってゆく
夏よ
刃でありながら
巨きな傷であり痛みである季節よ
ああ
髑髏たちの横切る空へと
数知れぬ陽炎の塔が 揺らめき聳え立ってゆく
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