夏の聖域/塔野夏子
 
――青空に白く輝く雲の塔
  降りしきる蝉の声
  激しい夕立
  長い夕映え
  潤むような硝子の星々――

見えない額縁に
あざやかに切り取られた
今この時 に
記憶と予感とがふいに鋭く輻輳し
たちあらわれる
夏の聖域

其処で私たちは
巨きな祭壇に捧げられた供物
透明な陶酔に
屠られてゆく




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