流星雨の夜(マリーノ超特急)/角田寿星
そらの向うで繰り広げられた
過去の無色な戦闘の成れの果て だ。
そいつらが毎晩のように地上に降り注ぐ。
ぼくの手みつかんない。もげちゃった。
ママ どこ? ママ?
アンちゃんが眼を閉じたままつぶやく。
ごめんな。
どうやら俺たちはお前らに
世界をそのまんまで渡す羽目になっちまった。
歓声が遠のいていく。
流星雨がやんで子どもたちの翳は
騒ぎ疲れて眠りにおちる。
ひとり またひとり。
冷蔵庫のような体型の車掌がやってきて
窮屈そうに背中を折り曲げながら
眠った子どもたちの翳ひとりひとりに
一枚づつ毛布をかけていく。
子どもたちの翳はぐっすり眠ったまま
夜と毛布に溶けて消えていく。
ひとり またひとり。
車掌が子どもたちの翳にちいさな声で
抱きかかえるように
なにごとかささやきかけるが
よく聴き取れない。
前 次 グループ"マリーノ超特急"
編 削 Point(8)