山岳地帯(マリーノ超特急)/角田寿星
 
もない。
ここにはかつて子どもたちが住んでいた。親に見捨てられた、
他の世界を知りようもない、兄弟かどうかさえわからない子ど
もたちが。干した草の根をかじり雨水をすすり、数少ないぼろ
布を奪い合って、そして弱く幼いものから少しずつ死んでいっ
た。生き残った子どもは死んだ子どもたちを埋め、その死骸か
ら花は咲かず、果実はみのらなかった。

森のはるか向こう、見えない海を南に縦断する特急列車がある
と、旅の手すさびに幾度も聞いたことがある。或るものは、そ
れは人類に最後に残された技術の集大成だと語り、また或るも
のは、それはサハリン製のラム酒に呑み込まれた愚か者がみた
あわれな
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