ノート(物悲しいかたまりが)/木立 悟
 





物悲しいかたまりが
からだの奥をふくらませている




水がどこまでも
水であるのは悲しい

言葉の色が
明るく消えてゆくのは悲しい

むらさきだけが
むらさきでいるのは悲しい

口のなかにいつも
糸があるのは悲しい

左目はまぶしく 右目は暗く
どちらも何も見えないのは悲しい

わたしが
わたしでしかないのは悲しい

受けとめきれない言葉がこぼれ
次々と次々と消えてゆくのは悲しい

名も無きものに名を与えようとすることに
悲しみをおぼえないことは悲しい




物悲しいかたまりが
ふくらみふくらみ からだを破り
言葉をつかさどる部分を連れて
星を出ていきかけている風のにおい



























   グループ"ノート"
   Point(7)