ノート(ephemeral)/木立 悟
 




エメラルド エメラルド
弦をおさえる指
年が改まる前の
閉ざされた窓



みすぼらしい小屋を風が揺らす
小さなかたまりが
ひっきりなしに打ちつけ
ひとつしかない灯りをざわめかせている



新聞をのぞきこむ幽霊がふいに遠去かり
今は居ない人物で部屋が満ちても
にぎやかさは無くはざまは沈み
やがてふたたび誰も居なくなる



外は吹雪き
窓は見えず
何処からか蒸気が流れてくるのに
あたたかさは終ぞ感じられない



表情の失い子猫の雪崩
布の上に散り咲いて
朽ちた階段が柱のように
曇に曇に突き刺さり
エメラルド エメラルド と呟いている






















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