ノート(雨と日常)/木立 悟
 




指と指のあいだのすべてに
見えない小さな輪がからみつき
食べても食べても消えてくれない


顔の横に 風を吹き出す鏡が居て
常に斜めを向いているので
首から上が映ることが無い


雨より細い生きものが
川の上に立っていて
下流へ下流へ歩いてゆく


トタンの闇が
枯葉を揺さぶり 落としつづける
打ちつけられ ふたたび剥がされ
わずかな光にまたたきながら


やわらかく浅く 狭い筒から
指は指にあふれ出る
肉色 鈍色
かきむしられる弦の色


白い痛みの酒のなかには
見たことのある涙ばかりが
溶けることなく微笑んでいる


洗えば増える指の輪を
夜へ夜へ放りながら
庭を去りゆく死と生の
双子の羽を見つめつづける























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