ふゆざくら/銀猫
最後の赤を脱ぎ捨てた
紅葉の合間から冬の声が届くと
過ぎた年月は
あどけない写真に
痛々しく画鋲の痕をつけながら
かなしみを、ときめきを、
なつかしさのオブラートに包み込む
あの時
となりに居た
きみの名前より
かの日を分け合った
そんな本当が
背骨となって
わたしに宿る
思い出は
輪郭も不確かな
夕刻の影法師に姿を変えながら
わたしのうしろに伸びて
音もなく寄り添ってくれる
ひなたの温度は
いつか抱き合った
ぬくもりに似ている
もうこの道行きを
ひとりで歩けるだろう
今宵の闇に
風景は少しずつその色を失い
冬に咲く桜は
群れず
仄かな白を讃う
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