雪待ち草/銀猫
この街にまだ雪は降らない
灰鼠色の空は浅い冬のまま
恋人たちの吐息や
ブランコを揺らす手に護られている
わたしの何処か深くにある黒いものや
寒い、と寂しい、が似ていること
それに気付く前に白く
白くなりたいと願っている、此処で
聖夜にはしゃぐ赤や緑は
ささやかな祈りには耳も貸さず
煌めく星たちの真似をして
綿菓子のゆきはことさらに甘い
そんな空気の澱みの下で
ひっそりと伸びた雪待ち草の根は細く
かなしく恋をしたおんなの
肩先を滑り落ちる髪と
同じ匂いがする
この街にまだ雪は降らない
乾いた風が浅い冬のまま
雪待ち草の淡い葉を揺らし
月は十二を数える
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