橋/岡部淳太郎
 
の中に落ちてしまいそうな一定のリズム。と、突然、一羽の雉子が僕の目の前で飛び立ち、一瞬にして眠りは後方に退いた。立ち上がり、その軌跡を目で追うと、雉子は薄暗い森から明るい空の上へと舞い上がり、森の上空を何度も繰り返し旋回しつづけた。あの雉子は草原から森へ偵察に来たのだ。僕は悪態をつきたかったが、雉子が飛び立った羽ばたきのあまりにも大きな音に耳を突き破られて、ただぼんやりと空を見上げていた。一羽の雉子によって起こった森の異変。森の平和はかき乱され、目の前を早まった枯葉が落ちた。そして感じた恐怖。枯葉はことごとく血に染まっている。足下の腐葉土の堆積にも僕の血が染みこんでいる。森を支配しているのは僕では
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   グループ"散文詩"
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