橋/岡部淳太郎
 
ではなかった。僕は森に支配されつつある。僕の血を養分として伸びる樹木たち。僕の夢を食って飛ぶ虫たち。僕は走った。雉子の後を追って、森の中を走り出した。夏が終ろうとしているこの時、僕は森の基本的な掟をまざまざと思い知らされたのだった。
夢は終った。その場所から歩き始めなければならない僕の、宿命の脚韻。



夢は終った。その疲労を脚韻に感じる余裕もなく、僕は森の中を走っている。恐怖に駆られ、僕であるこの森から逃げ出すために。雉子はどこに行った。僕を呼びに来たあの雉子はいったいどこに行ったのか。虫が、何匹もの虫が走る僕を妨害しようとしてまとわりつく。いまになれば僕は、彼等が明らかな悪意を持
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   グループ"散文詩"
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